降誕祭の夜

汝の敵を愛せよ

いつまでもショパン  中山七里 著

 

いつまでもショパン (宝島社文庫)

一気に物語の世界に引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。

 

Amazonの解説より

映画化された大人気の音楽ミステリー『さよならドビュッシー』シリーズ最新刊です! 難聴をかかえながらも、世界的なピアノ演奏コンクール、ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、ショパン・コンクールの会場で殺人事件が発生。遺体は手の指10本がすべて切り取られるという奇怪なものだった。岬は鋭い洞察力で殺害現場を密かに検証していく! 『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ。

 冒頭が飛行機のテロによる墜落事故から始まりますし、テロによる爆破シーンや解説にあるような殺人事件の描写など、血生臭い場面もあります。

 でも、一番読み応えがあるのは、やはりショパンコンクールでのそれぞれのコンテスタントが奏でる一つ一つの曲の解説や演奏しているシーンの描写です。小節番号や指番号、そして曲の構成など本当によく調べて書き上げたと思います。

 

岬洋介が物語の中で非常に重要な役割を果たすのですが、今回の主人公はポーランド人のコンテスタントのヤン・ステファンです。彼は幼い頃から英才教育を受け、コンクールに臨むのですが、その中で他国のコンテスタントの音楽を聴きながら自分の音楽性や人間性を高めていく物語としての一面が大きいと思いました。

ヤンの目線で、たくさんのコンテスタントの演奏の様子が描かれ、そして彼自身とピアノとの関わり方について向き合っていくことになります。その中で特に大きな影響を与えるのが、二次予選での榊場の演奏と三次予選の岬の演奏です。

 

一次予選から二次予選、そして三次予選、本選。とこんなにたくさんの曲を弾くんだ。と思いながら読み進めました。

 

一次予選だけでもう、お腹いっぱいです。テンポの速いエチュードから2曲。そして、ゆったりしたエチュード数曲とノクターンの中から1曲、そして、バラード・スケルツォ・幻想曲・舟歌から1曲。

 

エチュードノクターンは曲数が多いので、メロディーが出てこない曲が多かったので読み終わってから、iphoneに取り込んでいるアシュケナージショパンのアルバムからどんな曲だったか確認しています(こんなときスマホってほんと便利です!)。

 

二次予選は、ワルツとポロネーズマズルカが入って一次予選の最終曲の中から一曲選ぶ感じかなと思いました。

三次予選にはソナタが入ってきます(ソナタ以外にも2曲!)。そして本選はピアノ協奏曲から、となっているということも初めて知りました。

ショパンコンクールのこと、よく分からないので間違っていたらすみません・・・)。

 

『さようならドビュッシー 』以上にピアノの演奏シーンというかコンクールの雰囲気の描写が凄くて、圧倒されます。一人一人の演奏の雰囲気や曲について、丁寧に描いています。

頭の中でショパンの音楽がグルグル回ります。

 

  

さて、ミステリーの要素ですが、冒頭の飛行機事故、そして殺人事件と爆弾テロ。そして戦場と場面が目まぐるしく変わりますが、全部ショパンコンクールへとつながって行きます。そして謎解きをするのはもちろん『岬洋介』です。最後に、彼は音楽の力で奇跡も起こします。

ちょっと強引な展開かもしれませんが、音楽が起こす奇跡のようなものはあり得ないことではないですから、私はすんなりと受け入れることができました。

 

物語の中でとても重要な役割を果たすのが、ノクターンです。しかも有名な2番。とても象徴的にこの曲が物語に奥行きを与えています。これ以上書くとネタバレなので・・・・。

 

甘くて、とても優しい曲です。

ganju39.hatenablog.com

 

 まだ、物語の余韻に浸っています。

 

明日からお盆だし、夜はショパンノクターン集を久しぶりに聴きながらくつろぎます。