『騎士団長殺し』の最終巻を買いに行ったときに、ふと三島由紀夫の著作のコーナーが目に入り、
「そういえば、三島由紀夫の作品、何も読んでいないなぁ。」とそのコーナを眺めました。
割腹自殺の印象が強くて、なんとなく敬遠していた作家でしたが、ノーベル文学賞の候補にもなったこともあるようですし、何か読んでみなくては、と思って手にしたのが、この本です。
古くは吉永小百合、そして山口百恵、堀ちえみで映画化になっています。そんなこともあり、『騎士団長殺し』を読み終えたら、読もうと思って一緒に購入しました。
裏表紙より
文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。
清々しい恋愛小説で驚きました。純粋な恋の物語で、たくさんの障害があるのですが、それらを乗り越えて二人の恋が最後に成就されます。爽やかです。
巻末の三島由紀夫の年譜を読むと、やはり彼の作品の中では「特異」なものであるらしいです。
漁の様子や島の風景がとてもリアルに描かれているます。水しぶきや臭い、風の音や波の音などの表現がとても豊かです。とても緻密です。
そして、新治と初江の姿がとても正直で誠実なところにも心を惹かれました。一章ずつ、味わいながら読み進めました。
山口百恵と三浦友和で映画になったことは知っていましたが、映画館に一人で行ける年齢ではなかったので、映画は見ていません。
雰囲気が伝わってくる予告を見つけました。見ることができてありがたいです。
この本の巻末にある三島由紀夫の年譜がとても丁寧です。彼が自殺したのは45歳の時です。早熟な天才だったのだと思います。本人も父も祖父も東大です。彼も官僚の道に入るのですが、もう学生の時からの執筆の勢いが凄まじいです。驚きました。
彼の思想的には相容れない部分もあります。でも。他の作品も読まなくてはいけないなと、感じています。