この作品は、テレビでたまたま高倉健主演の映画を見たのが最初です。
北海道の雄大な四季とローカル線。その駅に佇む高倉健の姿がとても印象的でした。
彼には北海道や雪景色がよく似合います。
それで、思わず本を買ってみたら、この作品は短編集の中の一つでした。
裏表紙より
娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録。日本中、を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラー作品集。第117回直木賞を受賞。
ほぼ、映画通りだったと記憶しています。本を読むとストーリーもですが、北海道の方言が散りばめられていて、それも懐かしかったです。大学時代に北海道の友達も何人かできたので、
「なあにはんかくさいこと言っているんだ。」「なまらめんこいだべな。」と言ったような会話が出てくるので、余計、この物語に親近感を持って読み進めました。
本当に実直な鉄道員が自分の職務に毎日責任を持っている姿や、そんな父親の前に現れた幼い時に亡くなった娘との会話などが、映画以上に心に響いて、涙が止まらなくなりました。
考えてみたら、壬生義士伝の作者でした。
私もどちらかというと不器用な人間ですが、自分なりに仕事は一生懸命こなしているつもりです。でも、こんな風に純粋に仕事に向き合っているか、と問われると自信がありません。
他の短編もとても良かったです。
- 鉄道員
- ラブ・レター
- 悪魔
- 角筈にて
- 伽羅
- うらぼんえ
- ろくでなしのサンタ
- オリオン座からの招待状
個人的には「ラブ・レター」がとても良かったです。調べてみたら映画やドラマにもなっていたようです。納得。
裏ビデオ屋の雇われ店長など、パクられたところで一泊二日、仮によほど検事の情が悪くて起訴されても、たかだかの罰金刑である。
という書き出しで始まります。そして、この雇われ店長の高野吾郎が主人公です。ひょんなことから日本で働いている中国籍の女性と会ったこともないのに偽装結婚します(させられます)。
そして、その女性が亡くなって遺体を引き取りに行くところから物語は進んでいきます。短編ですが、鉄道員と同じように、とてもよく練られたストーリーです。
ラストで出てくる、亡くなった康白蘭が吾郎に宛てた「ラブ・レター」が涙なしには読めませんでした。鉄道員より泣きました。
ゴールデンウィークのために長編小説を1冊購入しましたので、合間に、この鉄道員(ぽっぽや)に収められている8つの物語を再読しようと思います。