降誕祭の夜

汝の敵を愛せよ

影裏 沼田真佑(著)

 

【第157回 芥川賞受賞作】影裏

東日本大震災と岩手を扱っているという作品ということで、書店に並んだ時にすぐ買って読みました。

あの震災は、私の人生観やそれまでの生き方が、いかに甘かったかを考えさせられる出来事でした。私が住んでいるところでは津波の被害はありませんでしたが、停電や断水を数日間以上経験しました。そして、ボランティアで沿岸各地の被災地に行ったこともそれまでの自分の考え方や生き方を振り返る大きな転機となりました。

この小説は芥川賞なので読みにくいのかなぁ、と思って読み進めましたが、意外と淡々と読み進めることが出来ました。でも、その中に込めれれている著者のメッセージは的確に読み取れている自信はないです。

 

登場人物は多くはないです。印象的なのは岩手ならではの鬱蒼としたした緑の表現です。釣りがキーワードとして出てきます。私は釣りは趣味ではありませんが、釣りをするような川のポイントで水遊びをしたりキャンプをした経験はあります。だから、割とすんなりと読み進めることが出来ました。

 

いろんな書評を読むと自分の感想が揺らぎそうなのですが、「LGBT」とか「ゲイ」とか、そういったこともモチーフではあるとは思うのですが、それも含めて「真実は本人にも他者にも簡単に理解できるものではない」「遺された者は何をするべきか」といったことを強く考えさせられました。

 

今度映画化になるそうです。映画、見に行こうかなと思っています。何でもオール岩手ロケとか。

小説の中で「影裏」という言葉が後半に出てきます。禅語「電光影裏新春風」からとった言葉のようです。その言葉が出てきた場面が結構強烈に印象に残っています。

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今日は週末なので晩酌に「影裏」を呑みました。うまかった〜。