ずっと読みたかった本なのですが、2019年には「カラマーゾフの兄弟」やら「蜜蜂と遠雷」「コレリ大尉のマンドリン」を読んだり、昔見ていたドラマを再視聴したりで、後回しにしていまいました。
楽しみは後に、という気持ちもあったので。
全4巻読み終えてから感想をまとめようと思ったのですが、一巻を読んだだけで、もうすっかり物語の世界に入ってしまったので早速、思ったことを書いてみます。
主人公は妻と別れて海を臨む小田原の山荘で暮らす36歳の肖像画家です。不思議な山荘や屋根裏のみみずく、夜中に鳴る鈴、谷の向こうに住む隣人、古いレコード。色々なモチーフが散りばめられています。さらに、村上春樹の小説は音楽が物語の進行に重要な役割を果たすことが多いのですが、今回はオペラです。西洋の音楽、そして日本の古典を物語に絡めているところや比喩や暗喩が今回もたまりません。
彼の小説を読んでいると、本当に自分の心が掴まれたような気持ちになります。初期の作品より文体は読みやすくなっていることを感じますが、書かれている内容はずっと奥深いところにいっているような気がします。
私は時間を見方につけなくてはならない
私もここ数年、様々な出来事があり、泣いても、もがいても自分の力ではどうにもならなくて、時間の中で少しずつ物事を解決していくしかないことを感じる出来事を経験してきました。それこそ、自分の魂を削る思いをしながら。
解決したと思っても私の物語もずっと進行中です。
主人公の妹は心臓病で中学生の時に亡くなります。私の妹も重い心臓病で生死をかけた手術を幼少のときにしました。主人公にとって、とても大切な妹であった描写も心を打ちました。
幸い、私の妹はその後少しずつ健康を取り戻しました。
そんな場面もあり、主人公になったつもりで物語を読み進めています。
小見出しも素敵で、
「かたちを変えた祝福」
「これはただの始まりにすぎない」
なんて、見出しは、それこそ私自身に降りかかった出来事に通じています。
二巻目も楽しみです。Kiling Commendatore