降誕祭の夜

汝の敵を愛せよ

細川ガラシャ夫人(上)を再読して 

再読しようと思っていた本の2冊目です。

巻末を見たら9刷でした。その年は、大学を卒業して大阪の会社に勤めましたが、1ヶ月ほどで退職。そして新しい仕事についたというとても目まぐるしい年でした。 

なぜ、この本を読んだのかは、よく覚えていません。

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7月の半ば頃から2週間くらいかけて上巻を読み終えました。

上巻の巻頭に著者が『ガラシャ夫人』のことを書こうと思ったきっかけの一つに、戦前の教育で学んだ歴史に疑いを持つようになったことが書かれています。明智光秀について調べたことも書かれています。

戦争中の教科書が、あまりにも天皇中心に編纂され、歪められたものであったことを知ったからである。歴史上逆臣と言われた者が、必ずしもそうでないばかりか、真の勇者であり、反骨の士であったことも知ったのだ。

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 上巻は、玉子(ガラシャ)のこともですが、明智家の様子が詳しく書かれてあります。

明智光秀が妻煕子(ひろこ)を娶るエピソードから始まります。光秀の心の温かさが伝わってきます。彼が、家庭や家臣を大切にしたことも。そして光秀の生き方がぶれていないことも。

武将であった光秀ですが、彼は、とても思いやりのある温かい人間であったために、信長にそむいたことの伏線が上巻では書かれています。

玉子に目を向けると、信長の勧めで細川忠興に嫁いだことと、後に彼女の信仰に大きな影響を与える清原佳代や高山右近との出会いも描かれています。

キリスト教についての描写もありますが、上巻ではあまり大きくは取り上げられません。むしろ、当時の仏教勢力との信長の確執のような事の方が詳しく書かれてあります。その中で信長が行った非人道的なことも描かれてます。

天下統一に向けて信長が果たした業績は大きかったとは思いますが、「そんなこともしていたのか・・・」という場面の描写もありました。

 

光秀も玉子も自分の将来について、それぞれ漠然とした不安を持っていたことも物語の中で書かれてあります。きっと、読者は共感できるのではないでしょうか。私も、そうでした。

つい5年くらい前は、「この幸せが永遠にずっと続けばいいな。でも続くのであろうか・・・」と思っていました。やはり、予兆は的中しました。永遠に続く幸せなんて夢を見てはいけないのです。都合の悪いものから人は目を背けるものなのです。

 

本に話を戻します。

上巻最後の見出しは「暴君信長」です。

物語(人生)には、必ず伏線があります。予兆のようなものです。でも、それが自分の運命を左右するものであることを理解し防ぐ事ができる人間なんているのでしょうか?

光秀も、そういった大きな波に飲み込まていく予兆が描かれています。

 

20代の頃読んだときは、明智光秀のことよりも、題名が「細川ガラシャ夫人」ですので玉子の心情の移ろいを中心に読んでいましたが、今回は『麒麟がくる』を見ていたこともあり、

より【明智光秀】の気持ちになり読み進めました。

 

戦国時代の武士というのは本当に自分の命だけでなく、時には家族のことも犠牲にして生きていかなくてはいけないくらい、非常の世界であったことを再確認した上巻でした。

 

下巻では、玉子(ガラシャ)が宗教を拠りどころにし、信念に生きていく姿が描かれていたと思います。明日から読み進めます。