降誕祭の夜

汝の敵を愛せよ

ノーサイド・ゲーム  池井戸潤 著

初めて読む作家です。

彼の書いた作品のドラマで見たことがあるのは、『空飛ぶタイヤ』と『半沢直樹』です。

会社を舞台にした作品であることと、主人公が目的を達成するために真正面から物事にぶつかっていく姿勢がいいです。

 

同じように『ノーサイド・ゲーム』もドラマがとても良かったので、本を読まなくては、と思い、購入して読みました。

 

ほぼ、ドラマと同じ展開です。

ドラマで新たに付け加えられていたものは、

  1. 君島の家族(妻と二人の子供)
  2. 君島の大学時代の柴門監督とのエピソード

です。本にはないエピソードもたくさん付け加えられてはいましたが、本を読みながらドラマのことを思い出しても、違和感はなかったので、原作の良さを活かして、ドラマならではの人と人との関わりがクローズアップされていたのだと思います。

 

 本を読んで強く感じたのは、徹底的に『君島』が主人公として、彼の目線で物語が進行していくことです。君島の仕事にかける情熱や誠意を持って自分のするべきことに立ち向かっていく姿が凝縮されている感じがします。

 

 最初にドラマを見てから本を読んだのでドラマのシーンを思い出しながら読むことができたのも良かったです。

本を読んでからドラマを見ても、それはそれで楽しくドラマを見ることができたと思います。

 

ノーサイド・ゲーム

本の帯より

未来につながる、パスがある。大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビーアストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。アストロズを再生せよ―。ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーの再建に挑む。

 

君島の仕事に向かう姿勢や【人とのつながり】を大切にしている姿は共感できますし、理不尽なことに立ち向かっていく姿からは勇気をもらいます。

 

本の中では、敵対していた滝川が実は自分の理解者であり、親しかった元上司の脇坂には秘密があることに気づいた時に彼が心の中で呟く言葉が印象的です。

善と悪が入れ替わると言うより、人間の感情は本来、二元的なものではなく、色でいえばグラデーションに近いものかもしれない。その細かな傾斜や配分は、様々な環境や出来事によって色合いを変え、その人ならではの、独自の色調へと変化していくのではないか。

誰もが常に善人でもなく、また悪人でもない。

だから人は変われるし、組織だって変われないことはないと思う。

 この辺りに著者の考えが現れているのかなと思います。

君島自身が、自分に近い二人の姿を見た時に感じたことですが、きっと自分自身のことを見つめているのかなと思います。

 

自分自身がしっかりとしていれば、感情は周りの環境に左右されても、生き方がぶれないことが大切だということを言いたいのだと自分なりに解釈しました。

 

「明日も頑張ろう!」そんな気持ちになる物語です。他の作品も読みたくなりました。