降誕祭の夜

汝の敵を愛せよ

一人称単数  パート2 村上春樹 著

最近のことですが、仕事でお世話になっている知人とちょっとした飲み会がありました(3人です)。

密にならないように、ソーシャルディスタンスに気をつけて、日本酒が美味しいお店に行って、二次会は、古いレコードを聴かせてくれるお店に連れて行っていただきました。

店主さんに「何聞きたいですか?」と言われ、ビリー・ジョエルの『オネスティ』をリクエストしました。その曲が入っているアルバムをかけていただきました。

52nd STREET ニューヨーク52番街 [12" Analog LP Record]

とても懐かしかったです。知人の方は私より年配なのでコニーフランシスの『ボーイ・ハント』をリクエストしていました。60年代の曲でしょうか。知っている曲でした。まだ、私は生まれていませんが・・・・・。

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そして、また、リクエストは?と聞かれ、八神純子の『水色の雨』をリクエストをしました。

ベストアルバムのようなレコードで、他の曲もとても楽しく聴きました。

 

八神純子 THE BEST (12" Analog 1980初回盤)

 

八神純子の曲ってボサノヴァっぽいよなぁ、と思いました。

 

では、一人称単数のパート2です!

チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ

 

『僕』が大学生の頃に書いた文章が、生まれて初めて活字になり、それがちょっとした評判にもなった、というところから物語は始まります。村上春樹の小説を読むと必ずいろんな音楽が出てきますが、彼はその中でも多分一番ジャズが好きなんだろうな、と思いながら今までも彼の作品を読んできました。

 

さて、物語ですが、全く架空のレコードの紹介を『ジャズ』が好きな『僕』が大学生の時に書いたという場面から始まります。すごい想像力です。ジャズを知らなくても、その雰囲気を楽しみながらその架空のレコードの紹介文を読むことができました。

 

数年後、そんな文章を書いたことすら忘れていた『僕』がニューヨークに行ったときたまたま入った中古レコード店でその実在しないはずのレコードを見つけます。

 

買おうか買うまいか、迷うのですが、結局買わないでしまいます。

でも、心のどこかに引っ掛かった『僕』は次の日に同じレコード店に行って探しますが、残念ながら見つけることができません。店主に話しても実在していないレコードだと言われてしまいます。でも、そのレコードのタイトルはその年老いた店主を引きつけます。

 

しかし、もしあんたが、そのレコードをいつか手に入れたらなら、私にも是非聞かせてもらいたいものだね。

 

このお話は、もう少し続きます。今度は死んだはずのチャーリーパーカーが夢の中で『僕』のために演奏をしてくれます。そして、チャーリーは夢の中で『僕』に、自分が死ぬときに頭の中にあったメロディーは「ベートーベンピアノ協奏曲第一番、3楽章の一節だった。」 と告げます。

 

とても素敵な夢を見て余韻に浸っている『僕』がとても羨ましいです。

「ベートーベンピアノ協奏曲第一番」聞かなくちゃ!

 

ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles

 

冒頭の書き出しに『老(おい)』に関する考えがあります。自分が歳をとったこと以上に周囲の同年代の人々、特にも女性がそれなりの年齢になっていることに対して悲しい気持ちになるとのことです。

自分自身が歳をとったことについては、悲しい気持ちになるようなことはないと書かれています。ここは、読んでいて、羨ましかったです。きっとこの辺りは著者の気持ちが表れているのじゃないかな、と思い読み進めたところです。

自分自身のことに置き換えると、これからも、世間一般のような「幸せ」を味わうことはできないのだろうなと感じているからです。でも、自分なりの「幸せ」をつかみたいと思っています。多分、精神的なモノになるんだろうと思います。

 

物語に話を戻します。

 

高校の時に名前も知らない一人の少女が胸に「ウィズ・ザ・ビートルズ」のレコードを抱えて、スカートの裾をひるがえして廊下を早足で歩いていく、という回想から始まります。後にも先にもその女の子を見たのは、その時一度きりです。

そして、その光景がその時代の『僕』の思い出の象徴として心に焼き付かれます。

 

ウィズ・ザ・ビートルズ

ビートルの人気がもの凄かったエピソードも書かれています。

 

それらの光景を切り口にして、彼の高校時代のガールフレンドとの交際のことが書かれていきます。もちろん、ガールフレンドは、『ウィズ・ザ・ビートルズ』のレコードを抱えた女の子ではありません。

そのガールフレンドとは、とてもいい雰囲気で交際が深まっていきます。

彼女との交際の様子や、彼女のお兄さんとの会話、そして、彼女との別れ。

 

そして、数年後、ものすごく悲しい事実を彼は偶然出会った彼女のお兄さんから告げられます。

 

物語の終わりの文章が、象徴的です。

 

大切な思い出の残像として、冒頭の「ウィズ・ザ・ビートルズ」を抱えた少女とそのレコードジャケットの写真の様子が再び描かれます。

 

この物語を読んで、高校時代のいくつかの出来事を回想しました。